未来漫研 Vol.2 曽田正人 本格ファンタジー「テンプリズム」に込めた思い、そして未来について

未来漫研 Vol.2 曽田正人 本格ファンタジー「テンプリズム」に込めた思い、そして未来について

凡人には見えていない「マンガの未来」について著名人に語ってもらう特集企画「未来漫研」。第2弾となる今回は「め組の大吾」「capeta」などのヒット作を生み続け、2015年現在「テンプリズム」をWebで連載中の曽田正人にメールインタビューを行った。

「テンプリズム」は滅亡した王国の王子・ツナシと、未知の力を使う軍事大国「骨(グウ)の国」との戦いを描くファンタジー作品。フルカラー版の連載・出版や、アートプロジェクトのANIMAREALとのコラボレーションといった意欲的な試みでも注目を集めている。そんな同作の制作秘話や、今後について聞いた。

取材・文 / 安井遼太郎

恋愛は、智慧と気力を振り絞って闘うイメージ

Q. 「テンプリズム」の連載が始まってから約1年半、単行本は7巻を数えることとなりました。最新刊では主人公のツナシと、敵の女戦士・ニキとの関係をはじめとする恋愛要素など、目まぐるしい展開で読者を飽きさせません。曽田先生ご自身が現在感じている手応えや、心境はいかがでしょうか。

主要キャラクターが自分の欲望を叶えるために「智慧」を振り絞り始めたところが、描いていてとても楽しいです。

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「テンプリズム」7巻

Q. 「capeta」終了後、2014年に曽田先生のファンタジーが開幕すると発表されたとき、ファンの誰もが驚きました。佐渡島庸平さんと話し合い「思いっきり王道のファンタジーをやろう」ということで始まったとのことですが、なぜその結論に至ったのか経緯を聞かせてください。

世界観の構築にチャレンジしてみたい気持ちが以前からありました。
いいタイミングで機会が来たと思い取り組みました。

Q. ご自身では「ファンタジー…のフリをして実は作者初の恋愛まんがである」とも書かれていました。恋愛要素を盛り込まれた意図を教えてください。

恋愛は智慧と気力を振り絞って闘うイメージがあってとても描きたいテーマでした。
これまでスポーツや競技の闘いを思う存分描かせていただいてとても楽しかったです。そして今、心底描きたいと思ったのが恋愛でした。

Q. ちなみに新連載を始動させるにあたり、ファンタジー以外に出てきた案はありましたか。

設定の変遷はありましたがファンタジー1本でした。

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「テンプリズム」5巻より。

Q. これまでの曽田先生の作品と比較して、生身の人間が武器を使って戦うというバトル要素も斬新な点かと思います。やはり描くのは苦労があるのでしょうか? 描くにあたり気を遣っているところなどあれば具体的に教えてください。

人が絡み合っている絵は本当に難しいです(笑)。

自分の場合、勢いで描いた原稿が意外とデッサンがとれていてきれいな絵になることが多かったので、速いペースで大量に描くといい気がしています。

Q. 初のファンタジー作品を立ち上げると決まったとき、曽田先生の中はどのような思いでしたか。不安などありませんでしたか。

何事も始めてしまってから事の重大さとか意味に気づく性格で、不安は何も感じていませんでした(笑)。

Q. 「テンプリズム」は骨(グウ)の国の兵器描写など、練り上げられた世界観も大きな魅力です。設定を作りこむのには相当な時間がかかったそうですが、苦心された点はどこでしょうか。

毎回連載を描きながら設定を考えている感じです。ただ連載開始前に数百ページ没ネームを描いたせいで、そこでいろいろなことを一度思考しているのは大きい気がします。そのおかげかなんとなく世界が紡がれていく感じです。

Q. ファンタジー作品を描くにあたって、参考にしたり影響を受けたりした作品はありますか。差し支えなければ教えてください。

具体的なものはありませんが異世界を描くという意味では時代劇に惹かれることが多くなった気がします。

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「テンプリズム」4巻より。

Q. ニキが「作者的には大スキ」と書かれていましたが、それはなぜですか。またそのほかに印象的なキャラクターがいれば教えてください。

ニキはルックスと、いつも少し無理をしている感じが好きです。
最近ベルナが描いていて楽しいです。彼女のしゃべることはネームを描いてみるまで予想できないところがあります。その言い分にこちらが納得させられることも多くて不思議な興奮があります。

どこでも漫画を読めるようになった現代は素晴らしい

Q. 「テンプリズム」の始動と同時に、曽田先生は執筆環境のデジタル化にも取り組まれたと伺いました。理由はなんだったのでしょうか。

いろいろなことができて楽しそうだとずっと思っていました。また今回の連載に合っていると感じました。

Q. PCやスマートフォンでマンガが読まれるようになり、電子書籍の市場も無視できなくなってきた現在のマンガを取り巻く状況について、曽田先生はどのように感じていますか。

高校生の頃、深夜に部屋で「あの漫画読みてーなー」と思っても次の日まで我慢でしたから、よりいつでもどこでも漫画を読めるようになった現代は素晴らしいなと思います。

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「テンプリズム」カット

Q. 実際にデジタルで作業してみての感想を聞かせてください。未だに慣れない点や苦心しているところなどはありませんか。

デジタルは自分の性に合っていると感じます。しつこくやり直したり何パターンも試したりできる点。新たな技を発見したりするおもしろさもあります。

Q. 「テンプリズム」はフルカラー版での連載と電子書籍発売も同時に行われています。その展開の端緒や経緯を教えてください。

自分の漫画を色付きで見たかったので「カラー化する」というアイデアを聞いたときは興奮しました。興奮しつつそういう展開はお任せして、自分はテンプリズムを面白くすることに専念しています。

Q. 着彩はどのようなフローで進められているのでしょうか。できあがりを見ての感想も教えてください。

凄腕のペインターさんが塗ってくれて、どんどん進化しています。毎回ステキだなあと思っています。

Q. 紙の雑誌から始まって現在はWeb上での連載となっている「テンプリズム」ですが、心構えや表現方法に変化はありましたか。

特に変わったことはないのですが、更新(公開)日は妙にドキドキします。

「予想できない感じ」を描く

Q. 佐渡島庸平さんが代表を務められる作家エージェント会社・コルクとエージェント契約を結んでおられるとのことですが、佐渡島さんとの出会いや仕事をすることになった理由を聞かせてください。

何かで佐渡島さんのお仕事の仕方を知り、精力的な編集さんだな、会ってみたいなと思って5年くらい前にコンタクトを取ったのがきっかけです。

Q. 「雑誌の担当編集者」から「エージェント」と仕事をするようになり、変わったところはありますか。

自分は佐渡島さんが出版社の編集さんであったときに会って、漫画の話を始めたのでいまだに編集さんと仕事する感覚です。

Q. 佐渡島さんがTwitterにて「20話過ぎで、ツナシがニキと戦うところを描き始めて、曽田さんにも僕にも、この物語が何を描こうとしているのかが、深く理解できるようになってきた」とおっしゃっていました。ズバリ「テンプリズム」で描きたいこととはなんでしょうか。現在言葉にできる範囲で聞かせてください。

20話の頃と今では漫画が全く違うので、良くも悪くもこの変わりように自分で驚き楽しんでいます。この予想できない感じそのものをずっと描いていきたいです。

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「テンプリズム」カット

Q. ニキとベルナの女の戦いが盛り上がっている「テンプリズム」ですが、今後のストーリーについて、語れる範囲で聞かせてください。

自分の願いとしては2人にまた仲良しに戻ってほしいのですが……といいつつ面白くなるのなら殺しあってもらっても構わない気持ちです。

Q. 「テンプリズム」の今後を楽しみにしている読者の方へ、メッセージを聞かせてください。また、今後の「テンプリズム」で注目してほしいポイントを聞かせてください。

登場人物が生きている感じを味わってほしいと思います。
生きているように描きたい、それだけを考えています。