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【PinとくるWebマンガレビュー】ツッコミどころしかない!読者巻き込み型野球マンガ「デッド・オア・ストライク」

特集 レビュー PinとくるWebマンガレビュー

数ある野球マンガのなかでも荒唐無稽さでは群を抜く、活きのいい1作をご紹介します。西森生さんの「デッド・オア・ストライク」。読んでいるだけで、心地いい疲れを感じる作品です。

このマンガの舞台は野球のエリート高校・私立頂高校。野球の勝者がすべてを手に入れる絶対野球主義社会の世の中で、主人公の和希はある目的のために頂高校野球部に入学し、1軍を目指します。物語はハイテンションかつスピーディーに展開されていき、サクサク読める……と思いきや、読者はいちいち読み進める手を止めることになります。作中であまりに無茶な野球バトルが繰り広げられるからです。

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野球部の入部希望者に襲いかかる、3軍選手による千本ノック。

ヒロインの雪村沙奈は第1話で「頂高校で野球が出来ないって事は死を意味するわよ」と主人公に語りかけますが、これは嘘でも誇大妄想でもなく、ただの事実。学校に着いた瞬間に入部希望者はモノレールが大破するほどのノックを浴び、この試練に耐えられなかった人が乗る救急車が学校から街まで列をなし、3軍選手のヤジによる空気振動は衝撃波にまで昇華されます。

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魔球「死死球球feat.三振(デデデッドボールfeat.アウト)」を浴びる和希。
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魔振「ビクトリーロード」はピッチャーの眼前でなぜか垂直落下。

この時点で自分のなかのポルナレフが「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!」とつぶやきだしますが、ツッコミどころはまだまだこれから。和希は3軍のピッチャーと一打席勝負をします。キャッチャーが爪ミット(グローブ)で串刺しにせんと襲ってくる最中、球を6つに分裂させデッドボールと3ストライクを同時に奪う魔球「死死球球feat.三振(デデデッドボールfeat.アウト)」を和希はバット1本で打ち返します。何を言っているのかわからねーと思いますが、畳み掛けるように打者の必殺技・魔振(マシン)の存在が明かされます。2軍の魔振使い・華菱が代打で出場し球を打ち返したときは、ピッチャーの眼前でボールが直角に落下し、V字に股を抜いてそのままホームランになる魔振「ビクトリーロード」が披露されました。ツッコミどころしかありません。

しかし登場キャラは妙技に感心こそすれ、ボールが6つに割れようが謎の力でいきなり垂直落下しようが誰一人突っ込みません。和希たちは大真面目に絶対ありえない勝負を繰り広げているので、「ありえねーから!」「うそでしょ……?」「どういう理屈?」などなど、ついつい読者が指摘したくなってしまいます。まるで登場キャラになったかのように、2次元の人物に向かって自然と突っ込んでしまうのです。

野球マンガなのに野球、そして世の中の常識にとらわれない自由さ。読者をツッコミ役に回らせてしまう巻き込み力。疲れるけど面白い、「デッド・オア・ストライク」の今後に注目です。

(文/三木美波)