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【PinとくるWebマンガレビュー】 天才? 狂人…? 独自路線を進む個人サイト「so」の行方は?

マンガには、出版社からリリースされる商業作品とインディペンデントな個人作品の2種類が存在する。多くの人間が制作に携わる商業作品に比べ個人作品は自由度が高く、尖った内容のものも多く見られる。Webでも個人サイトで発表される作品は商業サイトのマンガに比べアクが強く、市田が管理する「so」のマンガはその代表と言える。

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2004年に執筆された4コマ「キまってる」。

「so」は2003年ごろにスタートしたサイトで、開設当初は女子高生がオヤジギャグや不道徳な発言をする4コマを中心にしていた。例えば「先生チョコあげる」と少女が手土産を渡し、その中に入ったアシッドペーパーを見た男性が「アシッドとチョコは全然別モノだぞ」とつっこむ「キまってる」という作品がある。ドラッグの俗称を題材にしたギャグは、出版社や編集者からの規制を受けない「個人サイトっぽい」自由なネタだ。しかし市田のマンガは徐々に、自由のひと言では片付けられない領域へと進化していく。

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マンガ「油淋鶏」の1シーン。油淋鶏の元となった古代中後の刑について解説している。

2009年ごろより発表される作品の多くは4コマからページものへと推移し、ネタもわかりやすい不道徳路線ではなくなっていく。近年は料理を題材にした作品が多く、その1つに「油淋鶏」の作り方を紹介したものがある。唐揚げを甘酢タレで食べる「油淋鶏」の起源は古代中国で執行されていた刑罰にあり、熱した油を罪人にかけ、その火傷は肉親の生き血でのみ冷ますことが許されるという残酷な“作り話”をレシピとともに描いているのだ。グルメマンガともおとぎ話ともつかない内容は、比類ない領域へと足を踏み入れている。

なお市田はWebマンガだけでなく「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」「こっそり行きたい 欲望ご利益神社」「漫画・日本霊異記」など、商業作品も多数執筆。その殆どが原作付きや企画ものでありながら、きちんとブラックな笑いを詰め込んでおり「so」の作品と通じるものはある。しかし唯一無二の狂気とも言える才能が発揮されているのは明らかに「so」のマンガだ。ファンとしては、アウトサイダーとしての才能が商業ベースでも発揮されることに期待したい。

(文/イイヤン)