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【PinとくるWebマンガレビュー】チョコ好きなあまり、驚きの食べ方を……!? ベテラン作家・いくえみ綾のごはんマンガ「おいしいかもしれない」

「きのこの山」か「たけのこの里」か……。決着のつかない論争を、私たちはいつまで続けるのでしょうか。正直もう耳にタコっていうかどっちでもええわという人も多いと思いますが、このバトルがいつまでたっても論客を増やしつづけるのは、それだけ人はみな譲れない食へのこだわりを持っているということだと思います。

ぷら@ほ~む、および本日3月18日にオープンした新サイト・スピネルで連載されている、いくえみ綾先生の「おいしいかもしれない」は、そんなお菓子やドリンク、麺類などのご飯ものまで、幅広く「食」について描き続けるエッセイマンガ。いくえみ先生といえば「バラ色の明日」で小学館漫画賞、「潔く柔く」で講談社漫画賞を受賞するなど女性マンガ界で燦然と輝き続け、生き生きとした人物描写と情感あふれるストーリーマンガに定評があるベテラン作家ですが、この「おいしいかもしれない」では、なんともゆるーく食に関するこだわりが紹介されていきます。

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「おいしいかもしれない」より。

「私のまったく個人的な見解で語られるほとんどためにならない食べ物中心のエッセイでございます」という前置きを挟んで、第1話に登場するのはチョコ菓子の大大大定番・ポッキー。そう、細長いプレッツェルの3/4ほどにチョコレートがかかったアイツです。しかし子供時代のいくえみ先生はその形状を認められなかったそうで、その理由を「チョコ好きはメイン部分(チョコの部分)以外キョーミがない(中略)なのに何本食べても何本食べても 最後をこの部分(プレッツェル)でしめくくらなければならないわけですよ」と説明します。プレッツェル部分も好きな人はなんとも思わないでしょうが、チョコ好きとしてこれが許せなかったいくえみ先生。そこで編み出したのが……袋を開封したらまず、中身をすべて出し、上下を逆さにしてチョコ部分を上に並べ替える作戦!「最後はおいしいところで終わることができる! 満足度UP!!」としたり顔です。

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「おいしいかもしれない」より。

しかしその話を大人になってからお母様にしたところ、「だからあんなに手ェべったべただったのか」と呆れられた様子。手がチョコまみれになっていても気にせず、夢中で食べていた……その執念には感服させられます。ちなみに本編では、のちにポッキーをひっくり返すことすら面倒になったいくえみ先生が、驚愕の食べ方に行き着いた顛末も描かれているので、ぜひ自分の目で確かめてみてください。

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「おいしいかもしれない」より。

このほかのエピソードでも、「おにぎりは絶対に冷たいほうがいい!」「LOOKチョコレートはパインが王様♡」などなど、いくえみ先生の食への強いこだわりが毎回明かされていき、「ああ、わかるわかる」と頷いたり、「そんなところにこだわるんだ……!」と驚いたりしながら、ページをどんどんめくってしまいます。デビュー37年目に入った超ベテラン作家さんなのに、そのチャーミングな素顔に親近感がむくむくと湧いてくるというもの。いくえみ先生はストーリーマンガの単行本おまけマンガでも、作品の裏話ではなくこうした日常のエピソードをよく描かれる方ですが、毎回そのあとがきだけを集めて読めるようなこの連載は、ファンにはたまらないものだと思います。

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おおひなたごう「目玉焼きの黄身 いつつぶす?」1巻

エッセイマンガではないですが、おおひなたごう先生の「目玉焼きの黄身 いつつぶす?」も同じく“食べ方”にフィーチャーした作品です。目玉焼きの食べ方ひとつで激しくケンカしたカップルが、破局の危機を迎える様には戦慄しますが、「ああ、確かに半熟の黄身をつぶして白飯と絡めて食べるのは至高だよな……」など、それぞれの言い分に納得してしまいつつ、他人のこだわりを覗き見するのを面白がっている自分がいるのも事実。100人いれば100通りの食のこだわりがある……と考えると目眩がしてきそうですが、他人の嗜好に目くじらを立てずに受容できるようになれば、きのこたけのこ戦争もなくなるのかもしれませ……ん。

(文/けもの)