【PinとくるWebマンガレビュー】お仕事マンガとしても少女マンガとしても楽しめる!「彼女のいる彼氏」

自分が働くようになって、マンガの登場キャラが働く描写をシビアに見るようになってしまいました。「こんなポンポン早退できるの?」「仕事の悩みがなさすぎなのでは?」「こんな毎回毎回報われるわけない……」と、少しでもリアリティがないマンガに出会うと雑念が湧いてきてしまうんです。が、作者自身が経験した苦労や悩みがにじみ出るような作品に出会うと態度が急変。「わかるっ……!わかるよ……!」とマンガを肴に酒を飲みたくなります。今回ご紹介する「彼女のいる彼氏」もそんな1作です。

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「彼女のいる彼氏」第6回より。

主人公の咲は、大手のIT会社でUIデザイナーをしている26歳の女性。作者の矢島光さんもIT企業に新卒で入社したという経歴を持つ人だからでしょうか、このマンガで描かれる仕事のつらさにはリアリティがあります。年上のエンジニアに修正を何度もお願いしなきゃいけないとか、いろんな人からフォローされている女の同期が上司の前で調子いいこと言うとモヤっとするとか、落ち込んでいるときにぐさっと刺さること言われて受け流せないとか、忙しいのに労いの言葉もなく急な仕事を振ってくる上司への苛立ちとか、言われたい放題言われているのに黙っていなければいけないとか、1つひとつは小さいことですが地味に心を削ってくる日常の1コマ。「そうそうそうそう、あるよねー」と赤べこのようにカクカク頷く私。

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「彼女のいる彼氏」第8回より。

一転、咲の恋愛描写を読むと赤べこの動きがピタッと止まります。ちょっとデキる広告プランナーの男からは女心をくすぐる感じで狙われ、ちょっとデキる年下デザイナーとはあれよあれよと言う間にいい感じになり。仕事面の悩みにいちいち共感し、「あるあるマンガ」という認識で読み進めていたので、咲と自分の違いに言葉を失いました。しかも咲は女を出すのが下手くそな「出し惜しみ系女子」という設定。「え、もしかして世の中の普通の女性はこんなに恋愛イベント目白押しなの? みんな日々言い寄られてるの?」という私の心の声に、咲の同僚のルミは答えます。「女出さなくても王子様が勝手にノッてくれるのは、アラサー少女漫画の中だけだよ」。

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「彼女のいる彼氏」第3回より。

そう、つまり「彼女のいる彼氏」はアラサー少女マンガなのです。リアリティのある仕事マンガというだけでなく少女マンガ、つまりファンタジーという側面もあると気付いたとき、この作品をより楽しく読めるようになりました。この作品はアラサーに向けているだけあり、学生のときは知らなかった社会の厳しさが描かれていますが、そのリアリティも恋愛面のときめきや憧れを盛り上げる一助になります。仕事の描写で共感し、恋愛の描写で胸きゅんする。高校生の恋愛を描いたマンガも好きだけど、自分に近い主人公のマンガを読みたい。そんなアラサー女子にオススメです。

(文/三木美波)