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本当に“Webでウケるマンガ”はこれだ!? 読者の後ろ暗い欲望を満たす「漫画ルポ中年童貞」

いきなりの私事で恐縮だが、時間があるとついつい2ちゃんねるやまとめサイトを周って、キチママやこじらせてしまった変態など、日常ではそうそう出会わない(出会いたくない)ぶっ飛んだ人のイタい話を読んでしまう。このように、インターネットは公言するのをはばかられるような後ろ暗い欲望だって満たしてくれる。そんな筆者が今、月1の更新を心待ちにしているWebマンガが「漫画ルポ中年童貞」だ。


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「漫画ルポ中年童貞」第1話より。「ルポ」と謳っている通り、このマンガに登場するのは、すべて実在の人物だ。

本作は幻冬舎新書の「ルポ 中年童貞」(著・中村淳彦)が原作で、「絶望の犯島」(双葉社)をはじめ、ゴシップ・風俗雑誌やコンビニコミックなどで活躍するマンガ家・桜壱バーゲンによってマンガ化されている。

タイトルからわかるように、描かれるのは中年童貞の現実だ。仕事が出来ないのにプライドだけは高い職場の鼻つまみ者、高学歴のネトウヨ、オタクしかいないシェアハウスで暮らすオタク、童貞のまま自殺したAV男優――多種多様な中年童貞の半生や生活がまざまざと描写される。

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「漫画ルポ中年童貞」第1話より。中年童貞の姿は露悪的に描かれている。

そもそもルポルタージュやドキュメンタリーといったノンフィクション分野において、取材する側は“空気”であるべきだとされている。取材対象を過剰に賛美したり貶めたりせず、“ありのまま”を切り取って、その評価は受け手に委ねるべきだ、と。だがしかし、桜壱はエラの張った頬にびっちりの吹き出物、落ち窪んだ目に禿げ上がった頭など、露悪的に中年童貞の姿を描く。その絵柄も相まって、本作を読み進めると吐き気にも近い感情が引き起こされる。軽い読み味の作品が多いWebマンガ界において、えげつないほどのリアルを描いた本作は明らかに異色だろう。

日曜午後のドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」なんかにダメ人間が出てくると、2ちゃんねるの実況スレは大いに盛り上がる。みんな「自分はこいつよりマシだ」と安全地帯に立って、そのダメさを嘲笑う。そんな光景を見ると、実は本当に“Webでウケるマンガ”というのはこういう作品なのかもしれないと思う。それが良いことかどうかはわからないけれど、それもまたひとつのリアルなんだろうな。

(文/須賀原みち)