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「フランスはとにっき」海外生活の優雅なイメージ覆す、電波少年みたいな海外エッセイ

特集 レビュー PinとくるWebマンガレビュー

海外在住の作家さんや海外からやってきた作家さんが増えてきたからか、海外での生活や外国から見た日本を描くマンガが最近多くなってきています。この年齢まで海外に行ったことのない私なんかは特に「海外ってそうなんだ」「日本のこういうところって海外から見ると特殊なんだ」という部分を知ることができ、非常に楽しいです。

「フランスはとにっき」もそんな海外生活を描いた作品のひとつ。ワーキングホリデーで渡仏した藤田里奈先生のフランス生活を描いたエッセイマンガです。出国前のエピソードから物語は始まり、家探しや少しずつ生活に慣れていく様子がレポートされ、意外なフランス事情もしっかり知ることができます。たとえば、フランスの建物は日本でいう「1階」が「0階」で、「2階」が「1階」になっているという話には、思わず「へぇ〜」と声が出ました。

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第1話より。特に明確な理由もお金もないけど、しばらく海外で暮らそうと決める無職の作者。

ですが、「フランスはとにっき」でもっとも印象が強いのは、そういう異文化を垣間見る部分ではありません。この作品、「フランスで暮らすマンガ家のエッセイ」というよりも「体当たりの実録海外ドキュメント」なのです。

そもそもフランスに行こうと思ったきっかけからしてほとんど思いつき。アラサーで無職だったときに、就活も婚活もできる気がせず、時間だけはあるからという理由で決めています。そこから行き先を決めて、フランス語の勉強を開始。けれど、堪能とまではいえないレベルでもあったため、家探しも難航し、結局日本では家を決めないままノープランで現地へ向かうことに。

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第2話より。「行けば何とかなるだろう」という予測のもと、住む場所も決めずに出国。どうにかなりませんでした。

フランス暮らしというと優雅なイメージですが、「フランスはとにっき」の行き当たりばったり感はむしろ異国サバイバル。「この人はこのあと本当に無事暮らせるのか……?」という緊張感と、次々に起こる予想外のトラブルの面白さは、かつての「進め!電波少年」にも似た感覚があります。

私のように海外未経験の人間にとっては特に、外国は距離以上の遠さ、怖さを感じる場所。でも、本作を読むと「こんな恐ろしい目に遭うのか……」という気持ちも膨らむ反面、「ああ、人間、どうにかなるんだな」という気持ちが湧いてきます。フランスに興味がある人はもちろん、全然興味がない人も引き込まれる波乱万丈なエッセイです。

(文/小林聖)