読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

兄妹の極上ニート生活も、周りの優しい人々のおかげ「働かないふたり」

特集 レビュー PinとくるWebマンガレビュー

新潮社のWebマンガサイト・くらげバンチで連載中の「働かないふたり」。いい歳こいて無職の兄妹・石井守と春子の日常も気付けば単行本7巻。いやー、この2人、まったく働くそぶりを見せませんね。

眠りたいときに眠り、食べたいときに食べる。具合が悪くなるまでテレビゲームを続けたり、映画を観たりと無職をこれでもか!と満喫する2人の姿に羨望の眼差しを向ける方も多いことだろう。でも「働いていない」だけで、こんなにも彼らを羨むだろうか。無職という状況以上に、家族や友人といった周囲の人々の存在が大きいのではなかろうか。

f:id:pinga_comic:20160601032923j:plain
「働かないふたり」より。

彼らの暮らしからは、無職という言葉の持つネガティブなイメージをまったく感じない。なぜならこの2人、働かないでいることをまったく後ろめたく思わず、本気で楽しんでいるからである。1人ならば孤独に押しつぶされそうな無職の日々も、兄や妹という最大の理解者がそばにいることで、終わらない夏休みのような極上の日々に変わるのだ。

彼らは家族や友人にも恵まれている。口やかましいが毎日おいしいご飯を作ってくれる母親、優しく2人を見守る父。休みの度に2人の元を訪ねてきてくれる友人の丸山。理想の兄(もしくは妹)、理想の両親、そして理想の友人に囲まれたこんな暮らし、誰だって憧れるに決まっている。周囲から愛された兄妹は、初詣に行けば父の健康を願い(父が倒れたら自分たちが働かなければいけないからだけど……)、臨時収入があれば母へのプレゼントを考えるような優しい人間に育った。両親に愛されているように、2人も両親のことを大切に思っているのだ。

そんな幸せは人から人へと伝わっていくのか、1人の人間を救うことになる。石井家の隣のアパートで暮らすOL・倉木だ。彼女は不眠症に悩まされていたが、窓から見える2人の怠惰な暮らしを眺めることで、安眠を手に入れる。現代社会を生きる我々は、彼女にこそ深く共感できる。単行本3巻以降、倉木は石井兄妹との親睦を深めていき、彼女も兄妹のよき理解者になっていく。

f:id:pinga_comic:20160601032929j:plain
「働かないふたり」より。不眠症に悩まされていたOL・倉木は、兄妹の様子を見ていることで安眠できるように。

こんなにたくさんの大切な人に囲まれていられるならば、無職じゃないにしても石井家の養子になりたいくらいだ。1話1話が非常に短く、どこからでも楽しめる本作。あなたもぜひこの幸せを噛みしめてほしい。

(文/籠生堅太)