マンガのクッキング#2「あたりまえのぜひたく。」きくち正太インタビュー前編

マンガのクッキング 第2回「あたりまえのぜひたく。」きくち正太インタビュー 塊肉から切り出すこだわりのしょうが焼き

Webで連載中のグルメマンガをピックアップし、劇中に登場する料理を作者に作ってもらう特集「マンガのクッキング」。第2回では「おせん」「瑠璃と料理の王様と」など数々のグルメマンガを執筆し、幻冬舎plusにて、食卓に上る数々の酒食を紹介していく料理エッセイもの「あたりまえのぜひたく。」を連載中のきくち正太が登場する。

今回の取材ではPinga編集部がきくちの自宅を訪問。6月23日発売の単行本2巻に収録される豚のしょうが焼きを調理してもらった。食材や調理方法はもちろん、器具にまできくちのこだわりが見え隠れする料理のお味やいかに。

取材・文 / 宮津友徳 撮影 / 小坂茂雄

月産60枚くらいのマンガ家の中では一番料理してる

──本日調理していただくのは豚のしょうが焼きです。マンガ内では「肉は塊肉を使用する」「焼く前に漬け込んだタレを切る」といったさまざまなこだわりが描かれていますが、一番のポイントはどこになるのでしょうか。

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きくち正太

焼くときに火を強くし過ぎない。家庭用のコンロだったら中火から強火の間くらいで、さっと焼くんですよ。しょうが焼きで肉が固くなるっていうのは、たいてい焼き過ぎちゃうせいですから。

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──なるほど。きくち先生はマンガで描く料理は、一度は作ってみるという話を聞いたのですが。

必ずというわけではないですが、大体は作っていますね。やっぱりしょうが焼きひとつとっても、金出して外で食うものと、自分で作ってみたものではマンガに描くってなったときにちょっと違ってくるわけですよ。だから100%のものを描くには、やっぱり自分で作ってみるしかないと。原稿を描いていない日は1、2食は必ず自分で作りますし、自分と同じくらいの仕事量、月産60枚くらいのマンガ家の中では一番料理しているんじゃないですかね(笑)。

──では普段料理をお作りになる中で、「これはネタとして使えるんじゃないか」と着想を得ることもあるんでしょうか。

「おせん」とか「瑠璃と料理の王様と」みたいなほかの料理ものでは、「これは使えるんじゃないか」って考えたりはしますけど。「あたりまえのぜひたく。」はそれをやっちゃいけないマンガですからね。

──どうしてですか?

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このマンガは日常でやっていることとか、これまでの自分の経験の中で美味しかったものを読者に伝えていくというのをコンセプトにしていますから。でも普通の家庭ではここまではできないっていうことも、もちろんあるので、そこは上手いバランスでギリギリ可能なところっていうのを考えながらやっとります。じゃあ調理を始めますか!

しょうが焼きレシピ

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材料(5人分)
豚肩ロースの塊肉…500g しょうが…1個 にんにく…2~3片 醤油…おたま1杯強 みりん…おたま1杯弱 日本酒…おたま2杯 コショウ…適宜 ウイスキー…適宜 キャベツ…食べたい分だけ

1. 豚肩ロースの塊肉を斜めに切っていく

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きくち正太

POINT
断面を大きくするために斜めに切っていきます。厚さは5mmくらいかな。コマ切れ肉とか薄切り肉と比べても、塊を自分で切ったほうが食感が良い。それに元から切ってある肉は高くて買えまへん!(笑)

2. しょうが、にんにくと調味料を混ぜ、タレを調合

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きくち正太

POINT
おいしいしもったいないので、しょうがの皮は剥きません。あと醤油は癖のない薄口でね。気分によって日本酒をワインに変えたりして洋風っぽくするわけですわ。まあこれで不味いわけがない。

3. 豚肩ロースをタレに漬け込む

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きくち正太

POINT
だいたい2、3時間は漬け込みますが、時間がなければすぐに出しちゃってもいい。これで冷蔵庫に入れておけば4、5日は持ちますね。何日も漬け込んだものは繊維が弱くなって、味がギュッと詰まったハムみたいになります。今日は事前に何時間か漬け込んだものを用意しました。

4. 付け合わせのキャベツを千切りに

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きくち正太

POINT
キャベツは玉の状態からではなく、剥いた葉を何枚か重ねて切ります。芯は芯だけで細かく刻んでください。

5. 肉をボウルの縁に並べて汁気を切り、フライパンで焼いていく

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きくち正太

POINT
汁気が多いと煮物っぽくなってしまいますし、焼き目をきっちりつけるためにもタレはしっかり切ります。切ったタレはあとで使うので捨てずに取っておいてください。焼くときはフライパンを下手に動かすと肉の表面温度が下がるので、基本フライパンはいじらない。

6. ウイスキーでフランベ。最後にコショウを一振り

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きくち正太

POINT
これは別にやらなくてもいいですが、ウイスキーでフランベすることで、しょうが焼きが洋食っぽくなります。最後にコショウで香り付けを。

7. 残っていたタレをフライパンに投入

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きくち正太

POINT
肉を漬け込んだ容器とボウルに残ったタレをフライパンに投入してひと煮立ち、ふた煮立ち。タレと肉が絡みあったところで、肉だけを先に盛り付けます。

8. 盛り付け

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きくち正太

POINT
肉だけを皿に盛り付けたあと、タレだけをもう一度煮立てて、肉の上からかけていきます。

完成

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──普通にイメージするしょうが焼きよりも肉厚ですね。

塊から切った肉ならではですわな。みなさん今日はお酒飲んでっても構わないの?

──まだインタビュー前ですが(笑)、ぜひいただきます。

よしっ、じゃあ食べましょう。ビールも冷やしてありますんでね(笑)。

作品紹介

あたりまえのぜひたく。
あたりまえのぜひたく。

めっちゃくちゃ美味え〰〰!!! これが自宅で食べられるなんて幸せすぎ!!
今すぐ食べたくなる、作りたくなる至福のコミックエッセイ。
普段日常の台所だから出会える、美味しさが待ってます。
毎度、作品のネタ探しでマンガ家・きくち正太の手を煩わす担当編集者は、ちょっとウルサイ厄介者。でも、そんな輩を瞬く間に黙らせてしまうのが、おかあさんとのコンビで作るきくち家の酒食の数々。
朝、きくち家は急須で淹れたお茶で始まります。そして、昼過ぎにはお買い物。魚屋さんで獲れたて新鮮な魚を見つければ「旬のお刺身」が、お客様がいらっしゃるとなれば「スペシャルおでん」が、夜の食卓を埋め尽くします。
ちょっとしたひと手間が「食マンガ家」の家めしレシピの隠し味───もう、美味しすぎます!!

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» あたりまえのぜひたく。 | 株式会社 幻冬舎
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プロフィール

きくち正太(キクチショウタ)
きくち正太

秋田県出身。1988年に週刊少年チャンピオン(秋田書店)にて、「獣王バイオ」でデビュー。代表作に「おせん」「きりきり亭のぶら雲先生」など。食や日本の伝統文化、釣りなどを主題にした作品が多く、ガラスペンを使った独自の絵柄にも熱烈なファンが多い。現在の連載作に「あたりまえのぜひたく。」「瑠璃と料理の王様と」。ギタリストとして音楽活動も行っており、アコースティック・インストゥルメンタルトリオ「あらかぷ」のメンバーとして、都内のライブハウスに出演している。