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飲食だけじゃない“空間”の魅力たっぷりの喫茶店マンガ「木崎少年のほろにが喫茶巡礼」

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「早く到着しすぎた、どこかで珈琲を飲みながら時間を潰そう」。

こういうとき、忙しさもあってついついチェーン店に入りサクッと済ませてしまうことが多い。珈琲を飲むというより、黒い液体を流し込んでいる感覚だ。本当ならもう少し早めに家を出て、ゆっくりと腰掛けて木のぬくもりが伝わるテーブルの感触を確かめながら、熱い珈琲をすすりたい。「木崎少年のほろにが喫茶巡礼」はそんな喫茶店の愉しみ方を、改めて思い出させてくれる。

本作の主人公・木崎亮史くんは「渋い大人」を目指す男子高校生。彼の行動原理はこうだ。

渋い大人はいつだってクールな表情で落ち着いており、“喫茶の流儀”もソツなくこなせる。イマドキの高校生とはひと味違う自分は、流行に乗せられることなく硬派に珈琲を味わう。歴史ある「カフェーパウリスタ」、お気に入りのカップで珈琲を味わえる「古瀬戸珈琲店」、昭和の雰囲気たっぷりの「本格珈琲 昭和」……木崎くんはそうしたお店を巡り、渋い大人になるべく喫茶店で己を磨く。

f:id:pinga_comic:20160628110838p:plain 第1話でアタリ席に座れて嬉しそうな木崎くん。口だけでなく目も愉しませてくれる喫茶店だ。

だが実際の彼はスイーツにワクワクしたり(必死にその表情を隠す)、お隣の席のマダムたちの会話にソワソワしたり(必死にその動揺を隠す)と、実はキャワイイ男子高校生なのだ。ちなみに、クラスの女子にもイジられている! そこもキャワイイ!

舌での味わい方を紹介するのみではないのが「木崎少年のほろにが喫茶巡礼」。何よりも空間に注目して描かれている。「席によってはシャンデリアが奇麗にうつりこむ オレはこれをアタリ席と呼んでいる」――第1話でカフェーパウリスタに行った木崎くんが、空間を愉しんでいる時の言葉だ。

その店の歴史、店主とのちょっとしたやりとり、他の客の笑顔や「なんでこんなものがここに?」と思わず笑ってしまうようなインテリア。味だけでなく空間にいること自体を愉しむ。空間に入り込んで、少しばかりの非日常を味わう喫茶店の醍醐味を思い出させてもらった。

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第4話、神楽坂のMOJO。作中ではメニューの紹介だけでなくお店の成り立ちやインテリアの解説も。

なお、本作に登場する喫茶店はすべて実在しているので、実際に足を運ぶことも可能だ。雰囲気たっぷりのお店でひと息つくもよし、打ち合わせをしたり仕事をするもよし。木崎くんは、喫茶店の色々な愉しみ方を教えてくれる。私も、あと30分早く家を出れば木崎くんのように渋い大人修行ができるはず。もう大人だけど……。

(文/川俣綾加)