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comicoスタイルとアニメコミック、「おそ松さん」のベストマッチ――仕掛け人インタビュー

特集 インタビュー

赤塚不二夫による往年のギャグ作品の全く新しい続編として、大ヒット作となったテレビアニメ「おそ松さん」。そのアニメ映像から切り取った画像で本編を再構成した“アニメコミック”が、comico PLUSに登場した。

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配信されたアニメコミックは、同サイトで配信されているほかの作品と同様、スマートフォンなどでの閲覧に最適化された縦読み、フルカラーのcomicoスタイルだ。近年ではあまり見かけなくなったアニメのフィルムコミックの手法と、comicoスタイルを組み合わせた本作は、どのように作られたのか。本作に携わる2人の仕掛け人に聞いた。

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インタビューに答えてくれた、NHN comicoのcomico編集チーム外部IPユニットリーダー/シニアリーダーの李ヒョンソク氏(左)、コンテンツビジネスチームマネージャーの吹田沙矢氏(右)。

縦読みのcomicoスタイルとアニメの絵コンテの近似

――今回の企画はどのように生まれたのでしょうか。

吹田 弊社では、これまでも既存のマンガをcomicoスタイルにアレンジしてきました。その一方、李さんと「ほかに新しいことができないか」という話をしている中で、アニメをcomicoスタイルで提供するというアイデアが出てきたんです。アニメの絵コンテなんて、まさに縦読みですしね。

――なるほど、アニメの絵コンテとcomicoスタイルのマンガは、確かに似ていますね。そういった話があったのはいつ頃でしょう?

吹田 2015年の半ばにはあったと思います。すると秋からテレビアニメ「おそ松さん」の放送が始まったので、「この作品をcomicoスタイルにしたい」と、アニメコミックの企画を本格的にスタートさせました。

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――「おそ松さん」に狙いを定めた理由は?

吹田 放送後に人気が爆発したことと、comicoも「おそ松さん」も女性ファンが多いので親和性が高そうだと感じたためです。

――企画を持ち込んだ際のアニメ制作側の反応はいかがでしたか?

吹田 快諾してくださいました。チャレンジし続ける姿勢はcomicoと同じなので、そういう意味でも相性が非常によかったです。

李 アニメコミックは初めての試みだったので、「おそ松さん」ほどネームバリューがある作品が第1弾というのは心強く感じました。

――何かアニメ制作側から注文はありましたか?

吹田 いえ、特にNGなことはありませんでした。もしかしたら裏で関係各所にすごく調整していただいたのかもしれませんが……「これは面白くしなければいけない」と身が引き締まりました。

動きや音がなくてもアニメと同じノリを再現するために

――制作が決まってからはトントン拍子で進みましたか?

李 いえ。原作のない新作ならただ面白ければいいのですが、今回はいかにアニメ「おそ松さん」の面白さを再現するか、というコンセプトなので試行錯誤の連続でした。まずアニメコミックは静止画なので、アニメが持つ“動く”という一番の武器がなくなるし、音もありません。

吹田 6つ子って細かな違い以外はビジュアルがほぼ同じで、アニメでは声のおかげで誰がしゃべっているかわかっていた部分もあったと思います。その声がないわけで、アニメコミックにとって「おそ松さん」は意外とハードルが高い作品なのかなとも思いながら制作過程を見ていました。

李 声がない分は、セリフの吹き出しに色を付けて区別できるようにしました。

吹田 あとはアニメが持つ“間”も、うまく再現しないと面白くならないですよね。

李 標準的な見開きマンガと違って、comicoスタイルの場合、視線は直線的に下へと落ちるだけです。このスタイルでいかにアニメの間を再現するかが大きな課題で。コマの配置を工夫したり、空白を入れたりと、調整には時間がかかりました。

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――具体的な制作手順を教えてください。

李 実際の制作は外部の制作スタジオがやっているのですが、まずアニメ本編の動画から40~50枚の画像を切り出し、脚本を読みながらとりあえず順番に配置してみます。これを違う絵に差し替えたりコマを調整したりして違和感を潰していき、最後にセリフや効果音の文字を乗せます。1話分で大体2日かかりますね。

――セリフは脚本から拾ってくるということですが、吹き出し内にすべては入りませんよね。

李 そうですね。とても無理なので、ノリを維持しながら脚本にあるセリフを削っています。しかもアニメのアフレコは、現場で脚本からセリフが変わっていることもあるんですよ。そのためアニメと脚本を見比べる必要もあり、セリフを入れる作業もかなり手間がかかっています。

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――アニメコミックを制作してみての率直な感想は?

李 今まで誰もやっていなかった試みなので、ノウハウをイチから作る必要があったのは予想していた以上に大変でした。ただよかったことも2つあって、あらかじめ知名度がある作品を扱える点と、すでに素材が用意されている点です。マンガの編集をしていて、一番怖いのは作家さんから原稿が来ないことですから。

――最後に、アニメコミックの今後の展望を教えてください。

李 今回、せっかくノウハウを手に入れたので、いろいろなアニメで展開したいですね。いずれはアニメの企画段階から参加して、テレビ放送されたその日の内にアニメコミックで見返すことができる――そんなふうになるといいですね。

(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会