オモコロ編集部の人たちと新しいWebマンガを考えよう

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「発想の力技で勝負する」というタイプのマンガがある。ダンジョン内でモンスターを調理する「ダンジョン飯」や、古代ローマ人の浴場設計技師が現代にタイムスリップする「テルマエ・ロマエ」など、変わったコンセプトを持つマンガたちだ。 もちろん力技的な発想だけでなく内容の緻密さがあってこそ名作となった作品たちだが、「説明しやすい変なコンセプト」があるからこそ多数の人の興味を引き、ヒットに繋がったことは間違いないだろう。 この「変なコンセプト」を、その道のプロに考えてもらうと新しいヒットマンガができるのではないか? そう思った我々は、ある人たちに取材のアポを取った。


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オモコロ」というWebマガジンをご存知だろうか。“あたまゆるゆるインターネット”のキャッチコピーのもと、シュールな記事を平日毎日更新し続けているサイトだ。2005年から続くネタ系メディアの老舗であるオモコロ編集部を訪れ、新しいマンガの企画を考えてもらった。

取材・文 / 松本真一 撮影 / 安井遼太郎

f:id:pinga_comic:20160914150939j:plain:w640 オモコロの運営会社・バーグハンバーグバーグのオフィスにて。

原宿
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平日毎日更新で、役に立たない記事をアップし続けるサイト「オモコロ」の編集長。そのほかバーグハンバーグバーグの携わる数多くのサイトで活動中。

ダ・ヴィンチ・恐山
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マンガ制作ソフト「コミPo!」を使用したマンガ「くーろんず」シリーズを月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)、ガンガンONLINEで連載していた経験を持つ。また「品田遊」名義で小説も執筆している。



――このPingaというサイトでは、Webマンガの未来についてマンガ家とか編集者に話を聞いてまして……。

原宿 そのPingaさんが、なんでこのオモコロ編集部に?

――Webマンガって、紙より実験的な作品も多いと思うんです。そこでおかしな発想のプロであるオモコロの皆様に、新しいWebマンガの企画を考えてもらったら面白くなるのではないかと。

原宿 なるほど、わかりました。じゃあこれを使いましょう。

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――これはなんですか?

原宿 僕らは、アイデアを出す会議のときはこれを使ってるんですよ。

――でも「ポルシェ」とか「思春期」とか変な単語ばっかり書いてますね。

恐山 普通に会議してたのでは出てこない単語に脳が刺激されて、そこから話が広がることがありますからね。

原宿 ここからカードを2枚引いて、その2枚の要素を活かしたマンガを考えましょう!

――確かに「ダンジョン」+「グルメ」で「ダンジョン飯」とか、「とんかつ」+「クラブDJ」で「とんかつDJアゲ太郎」みたいな、一見よくわからない組み合わせだけど面白いマンガは多いです。

原宿 「ダンジョン飯」はあの設定と、九井諒子先生が描くというだけで「あーもう絶対面白いわ」と思いますよね。

――あ、今回はグルメ縛りにするのはどうですか? ヒットした「ダンジョン飯」とか「ゴールデンカムイ」以外にも、任侠が料理する「紺田照の合法レシピ」、「クレヨンしんちゃん」のスピンオフ「野原ひろし 昼メシの流儀」、棋士が対局中に食べるご飯を描いた「将棋めし」とか、相当やりつくされてはいるんですけど、まだまだできるんじゃないかと。

原宿  なるほど、カード2枚の要素プラス「グルメ」で三題噺みたいなことですね。それでやりましょう!

恐山 じゃあまずは私から。2枚引いてみます。

f:id:pinga_comic:20160914160316j:plain 【モスバーガー】【手先】


恐山 これはそのまま「モスバーガーの手先」っていうタイトルのマンガですね。主人公がモスバーガー以外はもうボロカスにけなすんですよ。

f:id:pinga_comic:20160914160425j:plain 「モスバーガーの手先」イメージ。イラストはオモコロなどで活躍するギャラクシー。


原宿 実際、1000円くらいの高いハンバーガー食べたときも「これ、モスバーガーのほうが美味いじゃん」みたいなこと言うヤツいるけどね。今までのマンガでは噛ませ犬として描かれてた「手先」が主人公っていうのも、斬新でいいかもな。

恐山 「手先」って曖昧なポジションなのに、世界大会が開かれたり。あと名場面としては、3巻のラストあたりで主人公が包み紙に残った汁を舐め取らずに捨てちゃうんですよ。そこで彼の心が変わってしまったことがわかる、悲しいシーンです。

原宿  モスバーガーから心が離れちゃうんだ。あの汁を舐めるのがいいのに……。

――「モスバーガー」「手先」という単語からの妄想がすごいな……。では原宿さんもカードを引いてみましょうか。

原宿 はい。(カードを引いて)なるほどこれは……ちょっとエッチな感じですね。掲載誌は漫画ゴラクかもしれません。

f:id:pinga_comic:20160914161706j:plain 【コーラ好き】【汁男優】


原宿 「コーラ好き哲」みたいなタイトルかな。コーラ好きの汁男優が主人公で、仕事したあとに当地コーラとかを飲みながら解説してくれるんですよ。

――「コーラ好き哲」、汁男優の要素って必要ですか?

原宿 コーラ以外にもう1個なんかヒキがないと。コンビニのバイトがコーラ好きでも、あんまり読みたい気にならないですから。コーラのさわやかな要素と、汁男優のマイナスな要素があるからいいと思うんですよ。

――なるほど、最初にちょっとエッチなシーンも入れられるし。

原宿 読者へのサービスは重要ですからね。で、汁男優って女優のおっぱいとか触ろうとして「何すんのよ!」とか言われると思うんですよ。そこで「そんな悲しみもコーラで洗い流そう……」みたいな感じで強炭酸のやつを飲んだり。

――だんだん面白そうに聞こえてきました。この「組み合わせたカードによるアイデア出し」って方法、最初は疑ってたけどいいですね。無理やりひねり出してみたら意外といいこともある。

原宿 でしょ? このまま続けていきましょう。

f:id:pinga_comic:20160928145726j:plain 【刑務所】【風邪の引き始め】


原宿 病弱のヤクザが主人公で、刑務所内で「ゾクッ」って悪寒が走って首が痛くなったりするとこから始まるんですよ。でも葛根湯も生姜湯もない、どうやってこの風邪の引き始めを撃退するか?

恐山 刑務所だし、全然食事のメニューの幅がない。

原宿 常備薬はあるかもしれないけど葛根湯はくれないだろうから、対策は「めちゃめちゃ汗をかく」とかになってくるのかな。だから食事をどうにかからくしたりして工夫していく。

恐山 その日のために、薬味をどこか壁の隙間とかに溜めておくとか。

原宿 「こんなこともあろうかと……」「そ、それは?」「ずっと溜めていた唐辛子を投入じゃ~!」って豚汁とかに入れて。あ、第1話はこれかもしれない。

f:id:pinga_comic:20160928213308j:plain 【カメムシ】【納豆】


原宿 これは人と人の、心と心の交流を描いたハートフルなマンガですね。「毎度、カメムシ納豆でございます」つって。

恐山 屋号なんですね。

原宿 納豆の蔵元みたいなところでの人間模様を描くんですよ。あとは「親父が残した幻のカメムシ納豆を再現しよう」「あいつの作った納豆はな、臭すぎてカメムシ納豆と呼ばれとったんじゃ」みたいなね。そういう納豆屋があって、丸の内で働いていたOLが実家に帰って家業を継ぐと。

――冒頭が完全に「夏子の酒」じゃないですか?

恐山 臭い食い物に焦点を当てるのはいいかもしれませんね。ほかの臭い物にも話が行けそう。

原宿 「おいしい臭い飯、あります――」。

恐山 ビッグコミックオリジナルで連載したいですね。

f:id:pinga_comic:20160928215103j:plain 【ケバブ】【銀行】


恐山 トルコ直送のケバブがめちゃめちゃ保存されている銀行があって、金庫をギーっと開けると肉を巻いたのがズラーっと。この絵は見開きで。

f:id:pinga_comic:20160928215219j:plain 「ケバブ銀行」イメージ。(イラスト:ギャラクシー)


原宿 そこに来た強盗が「な、なんだこの銀行は?」って驚いてるとこに、銀行員がスッと出てきて「ケバブ銀行でございます――」。

f:id:pinga_comic:20160928215211j:plain 【ゴリラ】【歯クソ】


原宿 北大路魯山人みたいな人が、死ぬ間際に「今までで一番美味しかったのはゴリラの歯クソじゃ……」って言い残して死んで。弟子たちが「俺達が歯クソの味を再現しなきゃいけないんじゃないか」って使命感に燃えて、ゴリラの研究を始めるとかそういう話かもしれない。

恐山 飼育されているゴリラじゃダメなんでしょうね。野生のゴリラの歯クソ。アフリカのほうに視点がいくグルメマンガはたぶんあんまりないですよね。蟻塚とか食べたりするマンガもいいかも。

――無限に出てきますね。そろそろ時間もないので、いいのが出たら終わりましょう。次、恐山さん。

f:id:pinga_comic:20160928215534j:plain 【バーチャルリアリティー】【釜玉】


恐山 VRブームに乗っかって、VRで釜玉うどんを食うマンガですね。ラストのページは毎回「なんだ、映像か~」って言いながらお腹が「グー」って鳴るオチです。

原宿 でも「このシチュエーションで食ったらもっと美味いだろうな」っていうのをVRで追求するのはいいかもしれない。「最新技術+ご飯」みたいな。

恐山 超・理系が主人公のグルメマンガは読みたいかも。「よく『真心こめて』とか言ってるけど、真心の組成式を教えてくれないか?」とか。これは真面目に面白いんじゃないですかね。

原宿 理系的に突き詰めた「おふくろの味」とは何か? みたいなね。

恐山 科学ひと筋だった博士が妻に先立たれて、息子を育てなきゃいけなくて料理に初挑戦するのが第1話。

――釜玉関係なくなったけど、これは読みたいですね。

f:id:pinga_comic:20160928215213j:plain 【B'zの稲葉】【焼き鳥】


――ズルいカードが出てきましたね……。

恐山 稲葉さんがライブのあととかに焼き鳥屋に行くマンガですね。それで「美味いね」って言うだけ。

f:id:pinga_comic:20160928215216j:plain 稲葉さんがライブのあとに焼き鳥屋に行くマンガのイメージ。(イラスト:ギャラクシー)


原宿 「今日は焼き鳥を食べたい……“この願いよかなえ”!」みたいな歌詞ネタを散りばめていって。それか、B'zの名曲を思いついたのは常に焼き鳥屋だったということにして、色んな焼き鳥屋を紹介していくみたいなマンガにしましょう。「このとき食べた焼き鳥が『ultra soul』の元となったのである」っていう。

――捏造じゃないですか。

原宿 めちゃめちゃ面白いけど、商業誌ではできないかな。稲葉さんに許可がもらえないから。でもマンガにタレントを使うってのは「ネイチャージモン」ぐらいで、意外となかったんじゃないですかね。

恐山 グルメマンガはちょっと流行ったらどうせドラマでやるんで、最初から当て書きしちゃえばいいんですよ。

――じゃあ最後、何かひとつ「これはヒットするだろう」って作品を決めて終わりましょうか。

原宿 やっぱりB'zの稲葉さんのやつかな。

恐山 今日考えた作品が一冊の雑誌になるなら、表紙はやっぱり稲葉さんでしょうし。

原宿 巻末は「コーラ好き哲」でしょう。今日出したアイデアは無料なので、描きたい人は描いてみてください!

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