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映画がつなぐ真逆の2人にときめく「私と彼女のお泊まり映画」

何かを通じて、全然違う価値観の人と笑って過ごせるようになれたなら――それは控えめに言っても幸せ以外の何物でもないはずだ。新潮社のWebコミックサイト「くらげバンチ」で連載中の「私と彼女のお泊まり映画」は、そんな幸せを「これでもか!」と味わえる作品だ。

わがままだけれど実は怖がりで泣き虫な小春と、一見するとクールビューティーだけれど変なところでアグレッシブな麻由美。2人のひそかな楽しみは、毎週金曜日に麻由美の家でお泊まり映画鑑賞会をすることだ。同じ高校に通いつつも疎遠だった2人は、レンタルビデオ店で会ったことをきっかけに距離を縮める。高校在学中から始まったお泊まり鑑賞会は、2人が大学に進学し、地元を離れた今でも続いている。

彼女たちはその日の気分で色々な映画を観ては、あれこれとおしゃべりをする。正反対な2人からは、なかなか同じような言葉は飛び出さない。ときには意見が衝突してしまうことも。けれど「わかるわかるー」なんて上辺だけのやりとりに逃げず、きちんと自分が感じたことを言い交わせるのは、互いを信頼しあっている証だろう。その過程で、普段の2人からは想像もできないような一面が見えてくることもある。麻由美は言う、「私映画を観るのと同じかそれ以上に 感想言い合ったり意見交わしたりするのが好き」。お泊まり映画は、彼女達にとって何よりのコミュニケーションなのだ。

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ときにヒートアップしてしまうこともある2人。けれど仲直りできる。

ホラー映画を観て眠れなくなった小春と仕方なく同じベッドで寝てあげる麻由美や、電話をしながらテレビで流れていた映画を一緒に観る2人には、ひたすら「ありがてぇ、ありがてぇ……」と感謝の言葉しか出てこない。かわいい女子がイチャイチャしている。それだけで十分すぎるくらいに心が満たされそうなものだけれど、それに加えて「私と彼女のお泊り映画」には、たとえ意見が食い違うことがあっても、価値観の異なる人とだって心の距離を縮められるという希望があふれている。それがこの作品に終始漂う幸せそうな空気をさらに濃いものにしてくれる。

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電話を切るのが惜しくて、そのまま同じ映画を観続けるというイチャイチャ。

作中で鑑賞される映画は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」といった記憶に新しい作品から、「プリティ・ウーマン」など懐かしの名作まで実在のものばかり。もしも彼女たちが観た映画を、あなたも観たことがあるのならば、自身の感想と彼女たちの感想を重ねつつ、2人の間に漂う幸せを堪能してほしい。

(文/籠生堅太)