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ゆるい名前だけど実は大きなチャレンジ!ふんわりジャンプ編集長インタビュー

いまホットなWebサイト

マンガファンなら誰もが知る“ジャンプ”の名前に、柔らかなイメージの“ふんわり”というフレーズが付いたサイト・ふんわりジャンプ。そのサイト名のとおり、ジャンプらしからぬ作品が並ぶ同サイトの編集責任者・清宮徹氏に話を聞いた。

www.funwarijump.jp

なお、記事の後半では清宮氏が選んだ「これを読めばふんわりジャンプがわかる(=コンセプトを理解できる)マンガ」を5本紹介してもらっている。気になるタイトルを見つけたら、ぜひPingaのお気に入り機能を利用して今後の更新を逃さず追ってほしい。

アンケートを重視する環境では育ちにくいマンガを扱う

――ふんわりジャンプが生まれた経緯を教えてください。

清宮 僕は集英社に入って、まず青年マンガ誌の編集を担当したあと、7年ほど前にライトノベルの部署に移りました。そして昨年夏にそこの編集長の座を後進に譲り、次は集英社がやっていない分野のマンガを新たに立ち上げたいと考えまして。そこでマンガ市場を数年ぶりに調べていると、ここ数年でヒットしている作品にWeb発のマンガ、特に読者の共感を得られるような日常を描いた作品が多かった。それを見て「これは集英社でも新たにそういった分野を扱わなければいけない」と感じたのが最初のきっかけです。

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集英社第4編集部企画室室長・清宮徹氏

――集英社では、確かにそういった作品が少ない印象です。

清宮 日常を描くような作品はドラマチックなことが起こるわけではないので、アンケートを取るとあまり上位に来ない。そのため、これまで集英社ではこのジャンルが育ちませんでした。

――ふんわりジャンプというサイト名はどのように決まりましたか?

清宮 最初は大人向けという切り口で“大人のジャンプ”というのも考えていましたが、アダルトなイメージがあるのでやめて(笑)。それよりは掲載する作品のゆるい雰囲気、そしてこれまでの“ジャンプ”が持つ熱いイメージと対照的な点をアピールしようと考え、“ふんわりジャンプ”に落ち着きました。“ゆるゆる”や“ゆるふわ”なども考えていたんですけどね。

――ロゴの横にいる猫のイラストもいいアクセントになっています。

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清宮 和田ラヂヲさんの絵ですね。ジャンプと言うと「友情、努力、勝利」がテーマだと世間では思われていますが、それと対極的なイメージを打ち出すためには、ビジュアルがあるほうがわかりやすいだろうと思って描いてもらいました。

読者と作家、ふんわりジャンプの2つのチャレンジ

――ふんわりジャンプにはどんな作品が載っていますか。

清宮 「日常」「共感できる」「等身大」がコンセプトです。具体的なジャンルとしては食べ物、育児、ペット、仕事あたりですね。特にグルメがわかりやすいですが、毎日の生活と結びついているので間口が広い。それでいて人それぞれに思い入れがあって、刺さるとすごく共感を得やすいんです。

――主な読者層は?

清宮 ふんわりジャンプは、狙い通りではありますが、男女半々か女性がやや多いくらい。週刊少年ジャンプはまた特殊ですが、それ以外のジャンプ系列誌は男性読者がほとんどなので、かなり違いますね。この傾向は特に育児ものに顕著です。育児中の女性はなかなか外に出られないので、Webを通じて外の世界に接するようです。

――そういった層を狙うことで、集英社としても読者層を広げるということでしょうか。

清宮 そうしたチャレンジもありますし、もう1点、Web出身の作家さんとお付き合いするのもチャレンジです。集英社は編集者が新人作家をマンツーマンで育て上げ、一緒に作品を作り込んでいくという伝統があります。ただ、Web出身の作家さんと接すると、作り込むより自然に描いたもののほうが意外と面白くて。自分のこれまでの考えとは全然違っていたので、衝撃を受けました。

――その一方で、ふんわりジャンプは寺田克也さんや岩谷テンホーさん、南Q太さんなどのベテランのプロ作家さんも起用されています。

清宮 Webマンガサイトだと珍しいですよね。ただ、この先生方に描いていただいている作品も作り込んだものではなく、日常の中で何か面白い切り口がないか相談して企画を考えていきました。

寺田克也による、料理がテーマの「東京空腹画(トーキョーハラヘリーガ)」は、軽快な語り口のコラムと、精巧なイラストができあがるまでの動画で構成されている。

サイト全体でふんわりジャンプのカラーを作っていく

――確かに動画を使ったものや体験レポート的なものなど、ふんわりジャンプにはひと捻りした作品が多い印象です。

清宮 数多いWebマンガの中で注目を集めるには、そうした企画の面白さが決め手になるでしょう。そういう意味では、トーチwebさんやくらげバンチさんは目の付けどころがいいですよね。「定番すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」とか「働かないふたり」とか……まさかニート2人がずっと家にいるだけでマンガになるとは。やわらかスピリッツさんの「お酒は夫婦になってから」も、夫婦でお酒飲むだけで面白いですしね(笑)。

――今後の展望を教えてください。

清宮 半年後くらいに書籍化する作品も出てくると思いますが、作品単位で勝負してもなかなか注目度は上がらないと思います。やはり「ふんわりジャンプはこういった面白さがある」というカラーを、ふんわりジャンプというサイト、レーベル全体で作っていきたいですね。

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編集長特選!ふんわりジャンプが“わかる”5本

清宮 育児もので、しかも非常に個性的なビジュアルなのでWebに馴染みやすいです。描かれているのはリアルな子育て模様なんですけどね。作者が二次創作出身の方で、パロディというか元ネタへのリスペクトを感じさせる描写もあり、そういったところがファン心をくすぐっているのでしょう。

清宮 最近は女性が飲み歩いたり、ひとりで外食するのが当たり前の時代になりましたが、それでもまだ、ひとりで寿司を食べるのは少しハードルが高い。そこでこの作品では女性作家を起用し、実際に食べ歩いた素直な感想を描いてもらっています。フィクションである一方、ルポでもあります。ちなみに原作者は江戸前寿司の分野の第一人者で、江戸前握りに込められた細かな工夫の解説も新鮮かもしれません。

清宮 「毒家脱出日記」はシリアスな家庭環境、「ゆめののひび」はニートの女性、とどちらも暗くなりがちなテーマですが、軽やかな絵柄のおかげで暗くならずに読めます。あと「ゆめののひび」の作者・ゆめのさんは人を観察する力があり、外出時に観察した人々の反応や街の風景とともに心象風景が描かれていて、ニートものの中でも個性的な作品になっています。

清宮 ほぼリアルタイムで婚活状況をレポートしているマンガで、しかもかなり心情や葛藤が開けっぴろげなのが面白い。さらに彼女ができたら連載終了という実況的な側面がある作品です。今後も、こういったチャレンジをしていきたいですね。