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姫乃たまの「人生には明らかに意味がある」 第3回

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姫乃たま

SNSのアイコンとか、何枚も撮ってやっと気に入った自撮り写真だとか、そういう良い自分の姿より、なんでもない写真のほうが、後から見返した時にずっと愉しいです。

当時あったはずの寂しさや悩みはもう遠くなっていて、星のようにすら感じられます。同時にいまのなんでもない日々も、いつか幸せだったと……うう、危ない……ついTHE虎舞竜の「ロード」を歌いそうになりましたが、著作権に引っかかるので止めておきます。

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「毎日カラスヤサトシ」より。(c)カラスヤサトシ/講談社

タイトルの通り1日1本更新されていた『毎日カラスヤサトシ』は、作者のカラスヤサトシさんが、家族との生活を描いた4コマ漫画です。

ハキハキした奥さんと、天真爛漫な娘のりーちゃん、カラスヤサトシさんの少し抜けた大らかな性格に、くすっと笑えて心が柔らかくなります。

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「毎日カラスヤサトシ」より。(c)カラスヤサトシ/講談社

私が特に好きなのは、カラスヤさんがりーちゃんと一緒に銀行へ行く回。カードの暗証番号を人に知られると「悪い人におうちのお金 ぜーんぶとられちゃう」と教えるのですが、私も幼少期にまったく同じことを母から言われました。 ざっくりとした教えを話す父と、素直に聞き入れる娘の姿を、初老の男性から微笑ましく見つめられていたという話なのですが、私と母のなんでもない会話も、いま思うと微笑ましいです。

ところで私は“顔が見える雑誌”が好きです。これは中学生くらいの時に思いついた言葉で、編集者の人柄がわかる雑誌を指します。漫画誌なら漫画家だけでなく、ファッション誌ならモデルだけでなく、どんな編集者が雑誌を作っているのか知りたいのです。エッセイ漫画が好きなのも、作者がどんな人なのか直接わかるからかもしれません。

そして『毎日カラスヤサトシ』には、嬉しいことに毎話、担当編集者のT田さんによるコメントが書かれているのです。さらに気まぐれに色塗りをすることも(T田さんがです。意味がわからなくて最高)。

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担当編集者のT田さんによる色塗り回。(c)カラスヤサトシ/講談社

家族との生活も、日々のT田さんとの原稿のやりとりも、ひとつひとつはなんでもないことだけど、積み重なっていくと、とても面白い。どうして人生ってなんでもないのに、こんなに面白いんだろう。

そんな積み重なった日常が収録された単行本は、表紙が新聞のようなデザインになっています。なんにもなくても、人生は毎日、新しいことの連続です。

プロフィール

姫乃たま(ヒメノタマ)
姫乃たま

1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を軸足に置きながら、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。フルアルバムに「僕とジョルジュ」、著書に「潜行~地下アイドルの人に言えない生活」(サイゾー社)がある。