姫乃たまの「人生には明らかに意味がある」 第5回

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姫乃たま

誰の死も辛いことですが、一緒に暮らした人を亡くすのは、より辛いことです。私の場合は祖父の死。しかし、恐れていたそれは23歳と比較的大人になってから訪れました。

子供の頃は、どんなに辛いものだろうとひたすら恐れていました。しかしこれが、いざそうなってみると、自分の生活もあるし、一緒にいる時間も限られて、祖父が亡くなっても世界は何も変わりませんでした。

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「ありがとうって言えたなら」より。(c)瀧波ユカリ/文藝春秋

「ありがとうって言えたなら」は、母親がすい臓癌で余命一年を宣告されてからの日々を描いた瀧波ユカリさんの漫画です。『はるまき日記 偏愛的育児エッセイ』や『臨死!!江古田ちゃん』に登場する母親のパワフルで毒舌な姿は、読者の印象に強烈に残っています。寂しく思う人も多くいるでしょう。

乱暴な話ですが、誰でも生きていれば死んでいきます。だから人や動物の死にまつわる作品は数多く存在します。それでもそのひとつひとつが魅力的で面白いのは、誰も同じ生き物はいないからです。

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「ありがとうって言えたなら」より。(c)瀧波ユカリ/文藝春秋

瀧波さんは作品の冒頭で、つい母親に似た人に目を引かれます。そして、母親と同じ人間はいないことに気が付くのです。何度でも。この作品には、人がどのように辛い記憶を整理していくのか、瀧波さんが身をもって、彼女にしか描けないタッチで綴られています。

私の祖父の死について、いまでは笑い話にしていることがあります。最期を看取ろうとして、伯母と祖母が交代で祖父のそばに夜通し付いていました。ある瞬間、ずっと苦しそうにしていた祖父が、ふと楽そうにしたので、2人とも安心してうたた寝したところ、目を覚ましたら祖父が息を引き取っていたのです。あんなに何日も夜通しそばにいた伯母も祖母も、祖父の最期は眠っていたのです。

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「ありがとうって言えたなら」より。(c)瀧波ユカリ/文藝春秋

祖父は恥ずかしがり屋で、格好悪いところはまったく見せない人でした。きっとそれで良かったのだと思います。もう私たちには笑い話にするほかないのです。

祖父が亡くなった後、こんな個人的な文章を自分のブログで書いていたら、同じ状況を過ごす人達から、多くのメールが届きました。私自身も祖父を思い出しながら、いま瀧波さんの作品によって心が救われている人達に思いを馳せています。

プロフィール

姫乃たま(ヒメノタマ)
姫乃たま

1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を軸足に置きながら、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。フルアルバムに「僕とジョルジュ」、著書に「潜行~地下アイドルの人に言えない生活」(サイゾー社)がある。