読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

姫乃たまの「人生には明らかに意味がある」 第7回

f:id:pinga_comic:20160930185142j:plain
姫乃たま

こんなくくり方もどうかと思うのですが、闘病ドキュメントマンガは名作揃いだと思います。マンガ編集者マンガと同じくらい。文字通り、命を削って描かれているからでしょう(ちなみに知人の編集者は、「他人の原稿を待つことに人生削ってる」と話していました)。

統合失調症で歩道橋から飛び降りてしまった卯月妙子さんの「人間仮免中」や、睾丸ガンの闘病を描いた武田一義さんの「さよならタマちゃん」に続いて、闘病生活が本人の手によって記された名作が生まれました。

www.to-ti.in

「くも漫。」は作者の中川学さんが29歳の時に、くも膜下出血で倒れてからの闘病生活を描いた作品です。なんと倒れた場所は、札幌ススキノの風俗店。“ススキノの奇跡”のような美人風俗嬢に技術を駆使され、絶頂に達したその瞬間、頭に体感したことのない痛みが走りました。アラサーになっても定職に就かず、父親のコネでようやく仕事を始めた直後のことです。給料を握りしめて意気揚々と風俗店へ向かった彼は、入院により再び無職に。さらに闘病する中川さんに追い打ちをかけるように、どこで倒れたのか親戚達が推理し始めて……。

f:id:pinga_comic:20160930185143j:plain
「くも漫」より。(c)中川学/トーチweb(リイド社)

中川学さんはサービス精神のかたまりのようなマンガ家さんで、1コマずつの絵柄は読者が疲れないようにラフでありながら、びっしりと面白さを詰めて書き込まれています。

f:id:pinga_comic:20160930185144j:plain
「くも漫」より。(c)中川学/トーチweb(リイド社)

くも膜下出血って、元気だった人が突然発症してバタッと倒れてしまう怖い印象があります。実際に、手術が成功しても14日間は植物人間になったり死亡したりする可能性があり、予防法は不明という怖い病気です(「くも漫。」で得た知識)。

f:id:pinga_comic:20160930185145j:plain
「くも漫」より。(c)中川学/トーチweb(リイド社)

題材になっている病気が怖すぎるので、作品の恐怖を緩和するべく(?)、脳みそがむき出しになったくも膜下出血のイメージキャラクター「くもマン」も登場します。これはキャラクターグッズ化あるぞー(あるかな?)。脳みそ繋がりで、今年、脳みそ夫さん主演で映画化も決定しています。

明日生きているかどうかなんて誰にもわからないけど、くも膜下出血は本当に今すぐ自分がなってもおかしくない病気なんだよなあ。いつか死ぬことをはっきり自覚した時、中川さんはマンガを描くことに決めました。私は何をしようと思うのでしょう。いつか死ぬ日が来ることをわかっていながら、命を削ってまでやりたいことって、私にはあるかなあ。脳みそがもやもやしてきました。

プロフィール

姫乃たま(ヒメノタマ)
姫乃たま

1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を軸足に置きながら、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。フルアルバムに「僕とジョルジュ」、著書に「潜行~地下アイドルの人に言えない生活」(サイゾー社)がある。