「トーベヤンソン・ニューヨークがやってきた ヤァ!ヤァ!ヤァ!」第5回

はじめまして、澤部渡です。本業はシンガーソングライターとしてスカートというバンドで歌とギター、その他諸々をやりながらトーベヤンソン・ニューヨーク(以下TJNY)にドラマーとして籍を置いています。そのほかyes, mama ok?や川本真琴 with ゴロニャンずにもドラマーとして参加しており、副業としてバンドをやっていると言ってもメンバー内で一番副業感が薄いという自負があります。しかし、もともとスカートのレコーディングやライヴでドラムを叩くことがあっても、ドラマーとしてバンドに参加したのはTJNYが一番最初でした。スカートでは自分が軸になって作詞作曲編曲を行っているのですが、TJNYでは共同作業で音楽を作っていくのでそれがとても楽しいです。

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トーベヤンソン・ニューヨーク

ご多分に漏れず私も漫画が大好きです。子供の頃には母が所有していた吉田戦車さんや藤子・F・不二雄さんなどを愛読し、思春期の頃にラブコメに走りかけていましたが高校にあがって木村紺さんの「神戸在住」を読み正気を取り戻し、今に至っています。

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作品冒頭のメンバー解説より。「天才」と評されるほかのメンバーに対して「凄く良いヤツ」と紹介されるリンゴ・スター。

そんな私が紹介する漫画はロドみさんの「リンゴ・スター物語」。20世紀で最も過大評価されているロック・バンド、ザ・ビートルズのメンバーの中で最も過小評価されている男、リンゴ・スターの半生を描いた漫画です。幼少期にリンゴがドラムを始めるところから、ビートルズへの加入、その活動から解散、その後の暗黒の時代、そこからの復帰が描写されていて、その点でとても興味深い。天才と称される他のメンバー3人との対比で始まる導入も軽やかです。この『リンゴ・スター物語』は決してうまいようには見えない画風なのだが、なんといっても奇妙な愛嬌があり「凄く良いヤツ」とされるリンゴの人柄を少しだけ思わせます。

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エピソード「青盤時代」より。リンゴに酷いことを言ったポールが謝り、バンドに結束力が生まれる感動的なシーン。

エピソードに事欠かないビートルズの波乱万丈をコミカルかつ乱暴に書き上げている序盤のスピード感はとても印象的で、個人的に好きなエピソードは「ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)」録音時の脱退劇。漫画らしい脚色はあるものの、これらが概ね事実というのはとても味わい深いです。大げさに言ってしまうなら細かい誤解やアレコレが重なってバンドとしての結束力が揺らいだ経験のあるバンドマンなら涙なしでは読めないシーンかもしれません。ストリングスの導入、テープの逆回転、レコーダーの技術革新、民族楽器の導入など、ポップの手法を先駆者でありながらやり尽くしてしまった、という意見もあるビートルズは多くのバンドマンが経験しているバンドの揉め事すら最初にほとんどやってしまっている、という事実に胸が熱くなります。後半の静かで沈鬱なタッチも魅力の一つだと思います。

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エピソード「そして」より。ビートルズ解散から時が流れ、リンゴは……。

この漫画の魅力として、荒削りながらも情熱が先行している点が挙げられるでしょう。音楽で言ったら自主レーベルからリリースされたものに近い佇まいを感じてしまいます。レーベルの意向などを考える必要もなく、自分のやりたいようにやっているような気がしたのです。私がこの漫画に惹かれるのはそこでした。きっ と私はどこかで、自分の好きな自主レーベルからリリースされた音楽作品と似たような感触を重ねていたのでしょう。

プロフィール

トーベヤンソン・ニューヨーク
トーベヤンソン・ニューヨーク

2011年結成の8人組バンド。グラフィックデザイナーの森敬太(Gt)を中心に、漫画家の西村ツチカ(Gt)と金子朝一(Vo)、サラリーマンラッパー・オノマトペ大臣(MC)、トラックメーカーのmochilon(Ba)、米国留学中のベーシスト・唐木元(Key)、東証一部企業のプログラマー玉木大地(Key)、ジェットコースターポップユニット・スカートの澤部渡(Dr)、という年齢もコンテクストも違う8人によって構成される。2015年12月に、初のアルバム「Someone Like You」をリリース。

また森は自主漫画レーベル「ジオラマブックス」も主催。TJNYメンバーが執筆陣として多数参加するマンガ誌「ユースカ」の最新第5号が、5月に発売されたばかり。取り扱い書店の情報など詳細は、レーベルの公式Twitterアカウントでチェック!
» トーベヤンソン・ニューヨーク公式サイト
» ジオラマブックス@dioramabooks|Twitter