国内最大級の電子コミック配信サービス「めちゃコミック」スタッフインタビュー

テレビCMでおなじみ、「めちゃコミック」の中の人に聞く ガラケー時代から電子コミックを売ってきて見えたもの

拡大傾向にある日本の電子書籍市場の中でも、目を引く勢いで成長している電子コミック配信サービス。「めちゃ犬(いぬ)」のCMがお茶の間でもおなじみとなった「めちゃコミック」は、ガラケー時代から電子書籍販売サービスを行い、現在は約700万人の月間利用者数を抱えるサイトだ。「めちゃコミック」を運営する株式会社アムタスの親会社であるインフォコム株式会社が今年4月に発表した決算によると、電子書籍の売り上げは150億円を突破しているという。

無料で読めるWebマンガに関するニュースを扱うことが多いPinga編集部。Webマンガとは似て非なる存在である電子コミック販売サイトや電子書籍業界についてより知見を深めるべく、アムタスの「めちゃコミック」担当の吉井美有氏とインフォコムグループ広報の峰岸純子氏に話を聞いた。

取材・文 / 安井遼太郎・松本真一 撮影 /安井遼太郎

電子コミック販売サイトは街の本屋と変わらない

──「めちゃコミック」さんは、最近急にいろんなところで名前を見るようになった印象です。

吉井 弊社はガラケーの時代から電子コミックを配信していて、今年で10周年なので、少しずつ少しずつ成長してきました。ですが、いろんな人に知ってもらったきっかけがあるとするなら、2年くらい前から始めたテレビCMだと思います。

──「めちゃコミック」を知らなくても、「めちゃ犬」の出てくるCMは見たことはある、という人は多いと思います。あの犬、可愛いですよね。

吉井 まず「めちゃコミック」を知ってもらおうというときに、インパクトを残そうと思い、あの「めちゃ犬」が誕生しました。好感度調査とかでもいい評価をいただいて、ありがたいですね。周りからも「あの犬のサイトだよね」と結構言われます。あとはフレンチブルドッグのファンやコミュニティ内ではあの犬が有名になったみたいで、「そこから広がることもあるんだな」って(笑)。でもそうやってマンガに興味がない人にも知られるサービスになったのは、本当にここ最近という印象です。

──どうして電子書籍業界に参入したのでしょうか。

峰岸 もともと企業向けのシステム開発をしている会社だったのですが、携帯キャリア様の課金関連システムを担当させていただくうちに、携帯のコンテンツ配信も手がけるようになり、とりわけ着メロサービスがヒットしました。次の主力サービスとして、様々な新規サービスを立ち上げていたのですが、その中の一つに携帯でマンガを読める「めちゃコミックス(現めちゃコミック)」を2006年11月に始めました。

──競合サイトとの差別化はどうされていますか?

吉井 それはずっと課題として考えているところではありますね。結局は電子コミックも街の本屋と変わらないんですよ。本を買うときって、家や会社などの近くの本屋さんに行きますよね。

──確かに、よっぽど欲しい書店特典がない限りは生活圏内で買うことが多いですね。

吉井 それが電子となると、もっと差別化しにくいんです。だからめちゃコミックでは「めちゃ犬」で覚えてもらったり、あとは無料で読める作品が毎月変わったりとか。細かいところではそういうことをいろいろとやってます。テレビCMは他社さんも始めてるので、今後も差別化は課題ですね。

携帯に触れる人みんながターゲットです

──「めちゃコミック」の利用者として、一番多いのはどういった層でしょう?

吉井 20~30代女性に多く利用いただいている印象です。

──電子コミックを読んでいるのは10代とか学生ってイメージがありましたけど、そんなこともないんですね。

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「めちゃコミック」担当の吉井美有氏。

吉井 10代は無料のサービスを使っている人が多いのではないでしょうか。もちろん中には、無料と有料サイトを使い分けてる人もいると思いますけど。

──女性ユーザーが多いというのは10年前からある傾向ですか?

吉井 ここ数年ですね。昔から女性のほうが少し多かったのですが、年々女性の比率が上がっている印象です。でもマンガを読むのって、もともとは男性のほうが多いイメージがありますよね。

峰岸 これは勝手な分析なのですが、男性は単行本を全部集めたり、出る前に予約する傾向があるのではないかと。それに、女性で少年コミックを読まれる方の中には、書店では少し買いにくいな、と思うケースもあるように思います。

吉井 単純にかさばりますし。

峰岸 女性はカバンが小さいですからね(笑)。

──女性はカバンが小さいので紙の本を買わない説(笑)。それは僕ら男性には抜けてる視点でしたが、言われてみればあるかもしれないですね。

吉井 ストレス発散とか自分へのご褒美みたいなものとして、女性のほうが携帯サービスを使うことが多い気はしてます。「嫌なことがあったから、マンガを読んで現実逃避して寝よう」とか。だからこういうサービスは女性のほうがもしかしたら合ってたのかなと。これも結果論でしかないですけど……(笑)。

──これは携帯でマンガを読めるサイト全般に言えるんですが、コアなマンガファンよりはライト層をターゲットにしてるイメージがあります。そこは意識されてますか?

吉井 あまりそこは絞ってやってはいませんね。携帯に触れる人みんながターゲットです。うちのメンバーも、マンガに詳しい人もいればそうでもない人もいますし。

ランキングの独自性の謎

──あとは「めちゃコミック」さんって、人気マンガのランキングに載っている作品が独特だなと思いました。今売れてるマンガとは全然違って、古いマンガが上位にあったりして。

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「めちゃコミック」トップページにあるランキング。画像は6月17日のもの。

吉井 基本的には「めちゃコミック」に多い20~30代の女性が読んでいそうなものの売り上げが多いですね。あとはサイトで特集を組んだり、広告を出したりするので、そこで読まれた作品が上位に来るのかなと。例えばドラマ化もされた「コウノドリ」は青年マンガ誌に掲載されていたので、本来ならあまり女性は手に取らないですよね。だけど産婦人科で起きるドラマを描いたマンガなので、女性も読むんじゃないかと思ってフィーチャーしたら結構サイト内で人気が出て。あとは「コウノドリ」の場合は読んだ人みんながレビューを書いていて、しかもどれも評価が高かったんですね。だから広告でも、「ちょっと推してみようか」と「発掘」というほどでもないですけど、そういった取り組みは行っています。

──そういう特集だったり、「この作品を推そう」ということを考えるチームがいらっしゃるんですね。

吉井 はい。チームのメンバーは、キャッチーな言葉や画が入った特集……例えば「壁ドン特集」とか「歳の差恋愛特集」みたいなのをやるときに、いろんな作品が頭に入ってるからすぐ候補を出してきたりすることもあります。

──「めちゃコミ」内のランキングが現在世間で流行ってる作品と違うのはそういう努力の成果なわけですね。

吉井 あとはやっぱり、巻数が短いとか1巻読み切りとか、そういう作品のほうが手に取りやすいのか、ランキングで上位になる傾向はありますね。そこは電子ならではの特色かもしれないです。

──なるほど。今後、それを研究し尽くした作家さんとかも出てくるかもしれないですね。

吉井 そうですね。電子のみで配信している作家さんも多くいますし。

誰でも知っているサービスにしたい

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広報の峰岸純子氏。

──すでにそういうテクニックが研究されつつあるんですね。電子コミックって、以前と違って「紙が電子化されたもの」というだけじゃなくなってきてる印象があります。例えば1話単位で販売したり、電子の単行本だけの特典というのも最近はたまに見かけるようになりました。

吉井 おっしゃるとおりです。以前は紙の単行本を電子化しているだけだったんですけど、うちで人気が出て、紙の単行本もそれに沿って売れて、結果として書店さんも平積みにしてくれる作品も出てきたりしています。なので紙も電子も両方、出版業界全体が盛り上がっていくのが理想だと思ってますね。

──今後の課題としてはどのようなものがありますか?

吉井 取り込みたい層で言うなら男性であったり、10代もだし、携帯を使っていく上の年齢が増えるのであればそこも……とか、夢みたいな話をし始めたらキリがないんですけど(笑)。プロモーション担当としては、まずは誰でも知っているサービスにしたいとは思ってます。普通に日常会話で名前が出てくるサービスになると、もっと色々と展開できるかなと。サイトを使っていない人でも知っている、そういうサイトになりたいという夢はありますね。電子コミックというジャンル全体がもっと盛り上がっていければと思いますけどね。

──なるほど、今回は勉強になりました。最後にPinga読者に対して、メッセージなどありましたら。

吉井 「めちゃコミック」はアプリじゃなくてWebなので、まず「めちゃコミック」って検索してサイトにアクセスしてほしいですね。トップ画面にある「無料コミックコーナー」をクリックすれば、会員登録なしで読めるんですよ。簡単に読めるサービスなので、まずは触ってもらって抵抗感をなくしてもらえるといいなと思ってます。「知っているけど触ったことない」という人もまだまだ大勢いると思うので、今回興味を持ってもらった人に、少しでも触れてもらって、「便利だな」とか「手軽だな」とか思ってくれるとうれしいですね。